プロフィール

竹内 啓也     

1941年愛知県生まれ。1965年日本福祉大学・社会福祉学部卒業。

福井県社協から神奈川県社会福祉事業団に転じ、地域福祉施設、老人ホームなどで生活指導員などを務め2000年3月に退職。

その後、「障害がある人もない人も、共に遊べるスポーツの開発と普及」を掲げて「統合スポーツ共遊球技研究所」を設立し現在に至る。

「やる気 1割」「技 1割」「あとの8割は運!」

■□こんなスポーツができました!□■

 参加者の誰が1等賞になるか判りません。子供のころからスポーツを「見る」も「する」も苦手だった人も、籠の中の好きな色の球を順番に取り、座った椅子の、前の机で作った坂の上から1球づつ坂の下の的に当たるように、ねらって、力を入れずに手から離すように置くだけで、立派に選手の役が果たせます。後は狙った球が的に当たり、得点を出してくれます。まだ的が残っていたら次の球を取り、的に向けてころり。

 腕の力の勝負ではありません。坂の横幅のどの位置で球を放してやるかが勝負を決めるのです。

「ここらで ちょっと ひとやすみ」おむすびを食べようとすると、「ころころ ころんと ころがって」・・・の【おむすびころりん】の昔ばなしは、坂だったからです。この話は的はねずみの穴でしたが、ゲームですから、ボウリングの小型ピン(倒す)だったり、転がす球と同じ球(当て弾き転がす)です。ピンや球の並べ方は幾通りもありますから、別の種目名となります。

 「デイサービス」や「すこやかサロン」等のプログラムには、パワーリハビリ、趣味の活動等やレクリエーションはありますが、室内でもありスポーツ種目はありませんでした。

「無ければ創るのが、福祉に働く職員のつとめ」と考案してきました。

 「共に遊べる球技」は、高齢者や、子供の福祉施設で私がご利用者様のご協力を得て考案しプレーを楽しんで頂き、皆が楽しめるようにルールを直しながら、更に新しい種目作りをして、25年経ちました。全部で48種目出来ましたが、グランドゲーム(立ってスティック使用)と、テーブルゲーム(キュー使用)は、各人の体の状態から有利、が出てしまうので、普及から外して、坂(スロープ)のもの24種目だけを、真の共遊球技としています。毎月2種目で12カ月(1年分)です。日本では多分先駆けの人間です。

 レクレーションスポーツはみんなが楽しむのもです。ゲームをする前から、誰々が優勝する・・・と決まっていたら、楽しいでしょうか?義理でゲームを1回はするでしょうが、2度と参加したくないのです。「ゲームの中では、笑いはともにあるべきで、誰かに対してではないし、馬鹿げているとか、自分には不適当だとか、満たされていないと感じるようであってはならない」と、フフランク・ハリスは『グループで遊ぶ、すばらしいゲームの世界』(川原塚達樹訳)で書いています。ある年の夏に、障害のある子どもたちと親の催しで披露したところ、後日、主催者から送られてきた「感想アンケート」に「楽しかったです。進行も良かったです。子供も楽しめ、大人ももろ上がりました・・・。」と、ありました。世代間の交流に、福祉の触れ合いに活用できる、「まさに共遊!」のゲームになっているのです。

 

さあ! 皆さん、「やる気」と、「技」と、「運」の風を呼び込み、「一球ストライク」に挑戦して下さい。

 

なぜ「障害者スポーツ」ではなくて「統合スポーツ」の提唱か~デイサービスなどでのスポーツプログラムの開発~

虚弱高齢者、障害高齢者のスポーツ種目はつくられてこなかったといえます。介護保険制度のもとにおける通所介護(デイサービス)や、通所リハビリテーション(デイケア)施設のサービスプログラムにスポーツ種目は無いに等しい。重度障害者(児)施設においても同様でしよう。否、「障害者スポーツ」があるのではないのかとの反論もあるでしようが、車いすバスケットや車いすマラソン等の種目は激しい動きと鍛錬の伴うものです。「障害者スポーツといっても特殊なスポーツが存在するのではなく健常者が行っているスポーツ種目と何等変わりない、唯一異なる点は、障害によってそのままでできないスポーツを障害のレベルに応じてルールを変えたり、工夫した用具を使用するだけである」とされているからです。国際障害者年の行動計画が「社会は、今なお身体的、精神的能力を完全に備えた人びとのみの要求を満たすことを概しておこなっている」としたなかに「スポーツ」も含まれていたが、その点で「障害者スポーツ」が盛んになってきたことは良いことであります。虚弱高齢者、重度障害者がスポーツに参加できないのは(「ルールの一部変更」や「工夫した用具」をもってしても)競技スポーツが健常者用につくられ「より速く」、「より高く」、「より強く」を目的としているからです。すべての人が楽しむスポーツにするためには新しい理念に基づいて二ユースポーツとして創られなければなりません。そのスポーツは「障害者スポーツ」のような余りにも細分化された「クラス分け」を無用なものとし、逆にすべての人が参加でき「誰もが勝利するチヤンスの平等」を生み出すものであることが必要です。それは、得点のところでの偶然を生み出す仕組みです。だからこそ福祉ふれあいと世代間交流も可能になります。いつも「健常者」といわれるひとだけが優勝するならば何の楽しみも無い、やりたくないゲームになってしまいます。「統合」とは全ての人が一緒になって楽しめるものの意味をこめて表現したものです。「日本障害者スポーツ協会」も「ボッチャゲーム」を普及しょうとしています。このゲームも目標球を最初に投げて置き、その球に近いところに自分の球を投げ、近い者から勝ちが決まるものですが、ねらうこと、投げることに不利をもっていても、だれかの投げた球が目標球に当たって目標球をはじいてしまい、そのことで自分の球の近くに転がってきたら有利となる、これもまた一発逆転の「偶然」の要素の強いゲームです。施設を利用する人の状態に応じたスポーツを保障するために職員自らがスポーツプログラムを利用者の協力を得て開発し一緒にスポーツを楽しみましよう。また地域交流の時にも大いに活用しましょう。 

「共に遊べる球技を創る 福祉レクリエーション財を工夫する」

著者:竹内啓也 発行年月 : 1996年09月 ¥1,260円

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